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イギリスでどうやってプロの通訳者になったか。

ロンドン在住通訳者の平松里英(rielondon)です。

日本と違う?! イギリスの通訳事情

2007年に日本からロンドンに移り、それ以来、主に通訳者として仕事をしてきました。日本からイギリスに移ったことで初めて気づいたことや驚いたこと、日本とは異なる事情などについて、ご紹介します。

その前に簡単に自己紹介から・・・・。そもそもなぜイギリスで通訳をすることになったのか。ひとことで言うと、独りで周りに助けもなく子育てと仕事を両立するには、日本よりも「定時に帰る」外国のほうが暮らしやすいだろうと考えたこと、それが理由です。

日本では、外資系企業のインハウス通訳者として、またシングルマザーとして、仕事と子育てに追われていました。

一時体調を崩したことや子どもの英語教育のことなど、いろいろと考えた末、子どもが小学校を卒業するタイミングでイギリスに移住することを決め、同時に自分もフリーランス通訳者として新しい土地で仕切り直すことにしました。ロンドンには住んだことがなかったので不安もありましたが、子どもにとっても私にとってもチャンスだと捉えて飛び込みました。親子3人、失敗や回り道をしながらも、今年で10年になります。

現在の通訳の仕事は、日本に限らずイギリスや他国のエージェント、さらにクライアントから直接請ける案件も多くあります。内容は、駐在員のご家族など個人のお客様の依頼から、政府レベルの国際会議までさまざまです。イギリス国内に限らず、大陸欧州各国、遠くはアフリカ大陸や中東まで出向く案件もあります。多くはないものの、日本に行くこともあります。

「いくつ外国語が話せるの?」

イギリスで通訳をしているとよく聞かれるこの質問。日本に住んでいたときは聞かれたことはありませんでした。それぞれの言語レベルは別としても、欧州では言語が2つや3つ話せることは珍しくなく、外国語を話すことを生業とする通訳者ともなれば、「さぞかし外国語が得意だろう」、転じて「いくつも話せるに違いない」と思われているようです。

「外国語を知らざるものは自国語をも知らざるなり」というゲーテのことばは真実のようで、特にイギリスも日本も、外国語を苦手とする国であるためか、通訳の仕事に対する誤解が多く、「外国語が話せる」イコール「通訳ができる」という思い込みも根強い気がします。実際に、日本語以外の通訳者は何カ国語も話せます。私のまわりにも、英語 – ドイツ語 – ポーランド語(3ヶ国語)の通訳者、イタリア語 – ドイツ語 – 英語(3ヶ国語)、仏・伊・西・英(4ヶ国語)、アラビア語 – イタリア語 – フランス語 – ロシア語 – 英語(5ヶ国語)などがいます。また欧州連合で、フルタイムで働くスタッフは(ちなみに通訳職ではない)英仏独の3言語で支障がなく業務がこなせる(Working Languagesことが前提だそうです。

もう一つの誤解として「通訳するのに内容の理解は必要ない」というものがあります。通訳とは言葉を置き換えるだけなので、内容を事前に理解する必要はない、と思われている気がしてならない瞬間があります。以前、コーヒーを買いに入ったあるお店で見知らぬイギリス人の客が「いずれキーボードを打つと、その端から外国語に変換される日が来る!そしたらものすごく便利だね!」と繰り返し店員に力説している様子を見かけたことがあります。その店員は外国人だったようで、そのお客の話には同意しかねているようでした。店員と私は思わず顔を見合わせ、二人で黙って呆れてしまったことがあります。

自分も相手も同じ言葉を話すと端から思っている人が多く、自分の言語が通じない状況に慣れていないのでこのようなことを言い出す人が出てくるわけです。イギリスの人は通訳の扱いに慣れていないことが多く、外国語ができれば会話も文章も訳せると思っています。アメリカでも基本的に英語なので、同じ誤解をしている人が少なくありません。また、外国語が話せることと通訳ができることは別だと知っている人はほとんどいません。このあたりは日本も同じです。

反対に、大陸欧州でスイスなどの多言語地域に行けば、普段から通訳を介した会話に慣れているのか、多言語という文化環境がそうさせるのか、通訳者の使い方が比較的上手です。個人差はありますが、逐次通訳のときは話が長くなりすぎないように適度に止めたり、通訳を終えた後、続きからスムーズに発言を再開できたりなど、通訳者から見れば、英語話者や日本語話者のお客様よりも呼吸が合わせやすく、通訳しやすいように思います。

通訳・翻訳の区別はなし
その他に、イギリスで通訳を始めてみて、日本と違うと感じたことをいくつか紹介します。

*通訳者の言語

日本では日⇔英の通訳者が圧倒的ですが、イギリスではドイツ語、フランス語はやはり主要な言語と言えます。ビジネス通訳ならそこに日本語が、警察や裁判所といった公共サービスならスペイン語や東欧言語が、また日本と最も事情が異なる部分としてはインド・パキスタンなどAsian Communityで使用されている諸言語(パンジャビ語、ウルドゥ語など)の需要があります。元植民地だった地域(イギリス連邦=Commonwealth)からの定住者家族とその地域社会があるからです。また、EUで求められているのは、ヨーロッパの希少言語を言語コンビネーションの中に持っている通訳者、中国語を持っている通訳者です。

*通訳者の数

日本にはあまり通訳者の団体というのは無いかと思いますが、イギリスには業界団体がいくつかあります。イギリス国内の公共サービス通訳者の全国登録制度(National Register of PSI =NRPSI)に登録している通訳者は1900人以上、英国翻訳通訳協会(ITI)では約3000人(通訳・翻訳者併せて)、公認言語学協会では約6000人(通訳・翻訳者以外も含む)です。また、EUのフルタイムの通訳者(スタッフインタープリター)は578人、パートタイム(フリーランスの登録通訳者)が約3000人だそうです。そのうち、日本語の通訳・翻訳者の数は、ITIの下部組織である日本語ネットワークの登録人数が約150人(通翻訳者併せて)ですが、登録していない通訳翻訳従事者もいますので、正確な数はわかりません。

*ワークスタイル

言語に関わらず、通訳者はフリーランスが多いですが、中には社内で語学力を生かしたポジションについている人もいます。

通訳と言う職業の社会的地位については、一概には言えませんが、通訳者をInterpreter翻訳者をTranslatorと明確に区別してくれる人は一般にはあまりいません。文章であろうと、発話であろうと、訳すことは訳すこと、すなわちTranslateとして片付けられてしまうことが多いです。

仕事はエージェントからもらうことが多い人もいれば、直受けばかりという人もいます。日本では圧倒的にエージェント経由が多い気がしますが、イギリスの日本語通訳者の仕事の受け方はもう少し多様性があると思います。どういうルートで通訳者になるのか、キャリア構築については、2回目以降で、改めて紹介したいと思います。

 

(この記事は通翻WEBに「第1回 日本と違う?! イギリスの通訳事情」として掲載されたものです。)

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