こんにちは。イギリス在住会議通訳者の平松里英(rielondon)です。
英語が通じない人がすぐにやめるべき2つのポイント
今日は私が実際に経験した国際会議での同時通訳での一場面をご紹介しながら、英語上級者なのに通じない経験のある方には是非チェックしてほしい2つのポイントをご提案します。
Contents
1.ジャバニーズイングリッシュは通訳泣かせ?
南アフリカでの国際会議でのエピソードです。
日本から選りすぐりの企業が集まり、プレゼンをする1日でした。通訳は3人体制。南アフリカはフランス語が公用語ですので、日英、日仏、英仏での通訳が必要でした。私は日英を担当しました。
そもそも国際会議だというのに、当日になるまで登壇者の詳細が知らされなかったり、直前になってスクリプトが出てきたりするケースはよくあることで、この日、蓋を開けてみたら英語でプレゼンする日本人ばかりでした。私達(日英、日仏通訳者)の出番はほとんどありませんでした。
日本語が母語でない英仏の通訳者が入ったのですが… 様子がなんだかおかしい。
そうです!ジャバニーズイングリッシュが聞き取れず、同時通訳に苦しんでいたのです!
2.英仏通訳者はなぜジャバニーズイングリッシュが聞き取れなかったのか
通訳者でなくても、こんな経験はありませんか。
旅行で日本を訪れている外国人に日本語で話しかけられたり、日本に住み始めたばかりの外国人とやりとりしたりする時に、一生懸命話してくれる日本語をこちらもなんとか理解しようとしますよね。そして、なんとなく会話が成立する。つまり、こちらは認識した音を無意識に日本語にあてはめているはずなんです。
では、次にこんな経験はありませんか。
英会話スクールの外国人の先生や出張でよく日本に来る馴染みの外国人とは英語が通じるのに、こちらが海外へ行って初めての方と話すとなぜか英語が通じない。
実は、日本に一定期間以上滞在していたことがある外国人や、日本語が片言でも話せる、聞いてわかる、その音に馴染んでいるなど、日本人と英語でやり取りをした経験がある外国人は、日本人の話す英語に慣れているからなのです。
ネイティブではそういう言い回しはしないけれど、きっとこういうことを言いたいんだろうと、あちらも理解しようとしてくれているわけです。
日本人の話す英語は、訛りや話し方など、日本語独特の音にかなり影響を受けているから通じないのです。
それがわかると、前出の英仏通訳者がなぜジャバニーズイングリッシュを聞き取れなかったのか、わかりますよね。
南アフリカは日本から遠く離れた国です。日本語に馴染みがありませんから、訛りの強い英語が音に合わない、スッと入ってこなかったのです。
企業側だって、海外でプレゼンするのですから英語自慢の日本人を送り込んでいるはず。留学経験がある人やある程度英語で話せる人を選んでいるはず。なんと、その英語が通訳泣かせだった、という…
3.通訳者のメモリの限界
さて、実はもう一つジャバニーズイングリッシュが通訳泣かせな理由があります。
それは、ジャバニーズイングリッシュは通訳をする際、ストレス、負荷が非常にかかるという点です。
今の時代はブースから同時通訳をすることが多いのですが、ご存知の通り、私達通訳者は英語を聞きながら同時に口から日本語を出していきます。
聞いて理解して分析する→文をこしらえる→できる限りきちんとした形でアウトプットする
つまり、聞く時点で英語が自然であればあるほど、出しやすい、訳しやすいのです。
難しい言い回しや長くてややこしい文章を訛りの強い英語で話されるよりも、シンプルに簡潔にまとまっているものを訛りがない状態の方が楽に訳すことができます。今のは何の音かな?と考えなくて良いほど、つまり、インプットの負荷が小さければ小さいほど、アウトプットがスムーズになります。
通訳者の頭の中はパソコンのメモリのようなもの。それぞれのキャパシティが決まっていて、訛りが強いものに対するインプットはそちらにキャパシティが取られてしまうというわけです。
4.通訳の英語=上級レベルの英語+発音
ところで皆さん、プロの通訳者はみんな発音がいいんだろうなと思いませんか。それが全くそんなことはないのです。
同じ日本人通訳者の中にも発音のレベルが低い人がいるのが実態。プロの通訳者でもカタカナ英語のまま通訳している人すらいます。英語のレベルと発音の癖の弱さが比例していないのです。なんとなくそれでここまで来れちゃった…そんなところでしょうか。英語力はとても高いのに残念です。
5.英語のレベルと発音の癖の弱さが比例していないのはなぜか
日本人だってこんなに英語学習しているのに、どこに問題があるのか。
個人的には、発音を英語学習の仕上げだと思っている人が多いように感じます。そもそもの英語レベルが低いからそれどころじゃないという感じなのかもしれません。
まず、音と文字を別々に覚えることをやめましょう!
英語が通じるようにするためにはまずコレです。
例えば、lrの子音のように音素レベルの違いがわかりやすいでしょうか。英語にあって日本語にない音。(日本語にしかなくて英語にない音だってもちろんあります。言語ってそういうものですよね。)
新しい単語を覚える時、字面だけでは頭に入らないので、なんらかの音にして認識していますよね。日本語の独特な音体型を英語に当てはめようとしているわけです。つまり、カタカナを充てて覚え、繰り返すごとに刷り込まれてしまっている状況。
そう!仮の音を充てがって頭に入れるのがいけないのです!
英語のレベルが上がってきたその後、発音を勉強しようとすると二度手間ですよね。まるっきり違う音をもう一度覚え直さないといけない。発音が後回しになってしまうことにつながっているというわけなのです。
最後に.日本語訛り、表現に慣れていない人たちと話す時にやめるべき2つのポイント
英語が上級者レベルになり、ようやく発音学習にとりかかったとしても、すぐには良くなりません。そのような時、次の2つのポイントを抑えるだけで日本語に馴染みのない外国人にも英語が通じるようになります。
- 単語レベル、句レベルのリズムをつかむ
単語レベル、句レベルのリズムをつかむことを意識します。普段から句レベルのリズムを崩さないように読みながら学習すると、変なところで文を切ることなく読むことができるようになります。変なところで切ると意味が変わってしまって通じなくなってしまいます。
- プロソディー(韻律)を意識する
英語にはメロディのようなものがあります。それをプロソディーと言います。
ルールを無視して、上げるべきところで下げたり、下げるべきところで上げたりするとそれがコミュニケーション上のノイズになってしまいます。疑問文だったら最後を上げる、とかいうことではありません。下げるべきところで上げただけで意味合いが変わってしまうこともあるのです。
英語が通じるようにするために、子音や母音、英語特有の音の一つ一つを学ぶのはもちろん大事ですが、この2つのことができるようになるのが一番大事。細かい音の練習は、実はその後のことなのです。