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海外のエージェントってどうなの? その1

こんにちは。イギリス在住会議通訳者の平松里英(rielondon)です。

Recruitment Agency

今回は、他の方からちょくちょく質問される海外のエージェントについて取り上げます。主にイギリスのエージェントについてですが、アメリカやその他の国にある会社の場合も含めてお話したいと思います。

海外のエージェントについてどんなことが気になるのか、関心があるのか、数人ずつ通訳者や業界関係者に事前に質問してみました。それに沿ってご紹介していきたいと思います。
まず、海外のエージェントと聞いて、共通して浮かび上がってきたのが、「海外(英国)のエージェントがそもそも、どういう仕組みになっているのか、どういう感じでやっているのかわからない、気にはなるけど、最初の1歩が踏み出せない」というもの。そう感じている通訳者は多いのではないでしょうか。

海外のエージェント経由の日本在住者向けの案件ですが、たまに「日本の通訳者を知らないか」と相談されることがあります。逆に、日本からこちらにやってきてする仕事があるかというと、こちらでは日本と比べれば案件数は多くありませんし、日本で報酬を受ける活動に従事する場合は、短期であればビザが免除されていますが、観光ビザで入国してこちらのエージェントに仕事を振ってもらうことは違法で、ビジネスビザの申請が必要になると思います。

Contents

1.最初にどのように縁を見つけるか

私自身はイギリスに友人が一人もいない状態で移住してきましたから、ツテもコネもありませんでした。(詳しくはこちらの過去記事)なので、最初はネットでエージェントを検索してコンタクトを取りました。どこでもよかったわけではなく、怪しくなさそうなところ(!)にコンタクトし、一つずつ関係を構築していきました。
今では、エージェントの方から「〇〇のダイレクトリで見つけた」「△△さんから紹介された」など、先方から連絡が来ることがほとんどで、自分から登録をお願いするようなことはありません。エージェントの数については、市場にどれだけあるのかはわかりませんが、私の登録件数は80カ所もありました。

80というのは、基本的に、一見さん、そして得意先のエージェントまでを合わせた数です。なかには、流れから登録することになったけれども、一度も仕事が来たことがない、例えば相見積もりの段階で敗北したとか案件が消滅したというエージェントも若干数あります。なお、直受けの顧客はエージェントを介していないので数に入っていません。

エージェントのオフィスの所在地もイギリス・日本はもちろん、アメリカからドイツ、イタリア、スペインなど。またイギリス・ドイツ・スペイン・アメリカなど複数の国にまたがって拠点を持っているような多国籍の会社で、その規模も大きくグローバルなエージェンシーまであります。こぢんまりとやっている会社とグローバル展開している会社とでは、それぞれ大きな特徴があります。これについては、後述します。

2.登録時の面接と採用方法

ヨーロッパという土地柄から、エージェントが扱う言語ペアの数も圧倒的に多く、規模もワンマンバンドから三桁、四桁の社員を抱える大規模なエージェントまで実にさまざま。仕組みについては、日本同様に通訳と翻訳と、両方やっている会社、翻訳だけ、あるいは通訳だけしか扱わない会社もあります。自分から申し込んで登録するパターンと、エージェントのほうからコンタクトがあって登録する場合とあり、前者は日本とあまり変わらない気がします。

では、何か違うことがあるかというと、まず登録の手続きです。会社によって、メールと添付資料のやり取りで済むようなシンプルなものから、スキルチェックはもちろん、オンラインあるいはオフィスでの説明会や研修(長い!)のあるところまでそれぞれです。ときどき、登録後も定期的にリフレッシュトレーニングのようなシステムもあるようですが、それはあまり一般的とは言えないと思います。

スキルチェックは必ずしもあるわけではありません。各種登録資料をやり取りする中でそれ以上は求められず、すんなりと登録・契約となるところもあります。ただ、登録プロセスの一環として電話でスキルチェックをされたり、登録してしばらく経っていても電話通訳などの場合は抜き打ちでパフォーマンスチェックしているところもありました。アメリカ系の大きなエージェントのなかには、かなりシステマチックな会社があり、スキルチェックも開発されたシステムを使い、研修もオンラインのものと、対面とあり、数回経てやっと登録なんていうこともありました。正直、途中で何度かやめようと思いましたが、乗り掛かった舟なのでやり切りました…。

3.危ないエージェントの見分け方

また、会社として実在しているか、そして安定して事業を営んでいるかどうかも重要かと思います。危険なのは、安定して営業しているように見えても、支払いに関しては悪質な会社もありますし、立ち行かなくなると倒産して、またすぐに名前を変えて復活する…を繰り返しているエージェントもイギリスにはあるので十分に注意が必要です。

最初に聞かされていた内容と話が徐々に変わってくるとか、他の通訳者にしている話が違うということは大いにあり得ます。相手を見て話している、相手によって話を変えているとしか思えないようなこともありました。通訳者同士で話が違うなら、お客さんに約束した内容と通訳者への指示内容が違うことも当然あり得るのでは?と不審に感じずにはいられません。

まあ、そんな詐欺みたいなところばかりではありません(笑)。ただ、駆け引きはありますし、大なり小なりそういう側面があると思いますので、そこは覚悟の上、proactiveな姿勢で、やり取りすることが重要だと思います。

4.相手の信用をどう調べるか、情報の入手方法

一番大切なのは、きちんと支払いをしてくれるかどうかでしょう。そこで、どう調べたらいいか。手っ取り早い情報源としてProzのBlue Boardというデータベース上のレーティングを調べるという手があります。こちらは私の場合は参考までにチラ見することはあっても、これだけで判断することはありません。

これ以外の方法としては、通訳職業団体に相談して調べてもらう(有料)、不払いの報告が集められているオンラインサービスを利用する(無料、有料の両方あります)、ブラックリストのようなデータベースがあるので、そこを見てみるなど。

ただし、インターネット上の情報の性として玉石混交であることは否めませんので、二つか三つ、複数の方法を複合的に組み合わせるといいと思います。デューデリジェンスですね。こうしてリサーチを繰り返しているうちに、どこの情報が信頼できるか、勘も養われていくことでしょう。

そもそも、そこまで手間をかける価値があるのか、と言われればそれまでですが(笑)案件によってはそこまでする価値があるものもありますよね。それに、初めてのエージェントであれば用心に越したことはないと思います。

現地の日本語通訳者・翻訳者はもちろん、他言語の同業者たちは当たり前のこととして、こういったリスクアセスメントおよびリスクマネージメントをしていますので、海外のエージェントに対して免疫を付けておくこと、自分なりに精査する術を身につけたり、習慣化することは、むしろ当たり前のことではないでしょうか。

5.料金について

寄せられた質問の中に「大手のエージェントと、中小または個人エージェントだと料金に差があるか」「物価の高いイギリス、通訳料も高いのか」というものがありました。結論から言うと何とも言えません。

海外では、料金をエージェントから提示することはあまりなく、通訳者が料金を提示するからです。海外のエージェントの場合、私の経験では「あなたの通訳料金はいくらですか?」と訊かれることが圧倒的に多いわけです。あくまで通訳者からの提示ありきのようで、過去にこちらから「予算はいくら」と試しに訊いてみたことがあります。その時も「いやいや、あなたの料金はいくらか教えてくれ」と言われました。

金額に関しては、すぐに折り合える時もあれば、ほとんど交渉の余地がない場合もありますが、いずれにせよ、折り合えない場合はどうやって折り合いをつけるのか、はたまた決裂するのか。決裂するにしてもどういう着地の仕方をするのか、けんか別れするのか、ソフトランディングか、牛歩作戦か…。(忖度はこちらではあり得ません)

ネゴ中の態度や表現、タイミングなどに、その人らしさが必ず出ます。交渉力が重要になる所以です。例えば、時間当たりいくらと訊かれたら、正直に時間当たりの料金を提案するのか、時間当たりでは請け負いませんと断るのか、など。この辺りは奥が深いのですが、そういった駆け引きのなかで相手もこちらの経験や通訳以外のスキルを見極めようとしているということです。
ただ、エージェント側の交渉の仕方には会社によって色が出ます。アメリカの会社で米ドル建てでしか支払いをしないというスタンスのところもあります。また、アメリカのエージェントと契約するときにはW-8BENフォームという書類を書かされました。これは「Certified of Foreign Status of Beneficial Owner for United States Tax Withholding」という支払いを受ける本人が外国籍(外国にいる)ことを証明するもの。源泉徴収に関するもので、アメリカの歳入庁に提出される書類です。(アメリカの源泉徴収率は高いです!)

イギリスのエージェントで必ず(!)支払いが遅れるところもありました。報告では安定しているように見受けられましたので、払えないのではなく金利を稼ぐためにわざと遅らせているのかとさえ受け取れるような性悪なところでした。ただ、このような悪質なケースは多いわけではありません。私の経験では多少支払いが遅れることはあっても(残念ながら日本のエージェントのようにきっちりしていないところが多い)ちゃんと最初に精査してから取引を開始しさえすれば、最終的にはちゃんと払ってくれるところがほとんどですので安心してください。

次号もこの話題が続きます。お楽しみに!

 

(この記事は通翻WEBに「第5回 海外のエージェントについて その1」として掲載されたものです。)

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