こんにちは。イギリス在住会議通訳者の平松里英(rielondon)です。
通訳者と発声とウィスパリングの関係
ロンドン在住日英通訳者の平松里英(rielondon)です。
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今日は発声について
通訳における発声のポイントは、
「自然な、美しい声を、豊かに、スムーズに出すこと。」
朗々と、大きな声
を出すことよりも、
自然な声を
美しく
ゆたかに
なめらかに
出すこと。
では、そもそも発声とは何でしょう?
硬起声と軟起声
発声には軟起声と硬起声の二種類あります。
軟起声は、のどが開いた状態で、スムーズに自然に出る声。
声帯が中央にそっと寄ってきて合わさる感じです。
その反対に、硬起声は、声帯を強くぶつかるように合わせて、
声の出だしに、強いアタックを使うときは硬起声です。
通訳者は声を多用する(話者 全員分 しゃべる!)仕事で、常にのどを酷使しています。
硬起声は声帯への負担が大きく、つねに声を使う仕事をしている通訳者にとっては大敵!
通訳者にとって、声をサステナブルに使うこと。
大事な道具を持続可能な使い方をしているかどうか。
これは死活問題です。
硬起声になりがちな人は、
長期的に見ると、声帯ポリープや結節など、問題が発生しやすくなるため、
軟起声を心がけ、硬起声をやめるよう、注意しなければなりません。
声帯と呼吸
まず、声はのどや口だけで出すものではないということ。
いうなれば、上半身全体で出すものなので、精神的に緊張していたり、
体が硬直したりしていると、よい声は出にくいのです。
また、首筋や背中など、どこかに無意識に力が入ってしまう体勢(姿勢)もNG。
前かがみ、逆に、後ろにそっくり返り気味の姿勢では、ゆったりとした声は出にくいです。
心身ともにほぐすこと。この筋肉も含めて、リラックスした状態をつくる。
このことは、首や肩、背中だけでなく、顔の表情筋にも当てはまります。
しかめっ面やこわばった表情をしていると、それが体全体に伝わり、
声を出すときにも、声帯やそのほかの筋肉がこわばってしまうのです。
通訳者はとくに声を意識しなければならない
通訳者の声とは、聞き手にとって長時間にわたり耳にする声です。
そして、その聞き方も、なんとなく耳にしているというより、
ヘッドフォンやイヤホンを使い、集中して聴いていることが多い声です。
だから、長いあいだ聞いていても、聞き手にとって疲れない声であることが大切です。
自分の声の欠点にはなかなか気づかない
声の質はもちろん、声の出し方やトーン、調子…。
自分の声のクセは、自分一人では、なかなか気づけません。
常に耳を鍛え、自分の耳で自分の声を客観的に評価できるように
同時に、自分の声が他の人にどう聞こえているか、どう響いているか、を常に考えること。
ウィスパリングのささやき声
ロシア語の会議通訳者 Cyril Flerov 氏も自身のブログの記事 “Whispering in Your Ear is Bad Idea!”のなかで、はっきりと提言しています。
“your voice gets tired extremely quickly, whispering is very damaging to the vocal folds”
(すぐに声が疲れてしまい、ウィスパリングは声帯へのダメージも大きい)
ないしょ話のときに使うヒソヒソとした「ささやき声」は、
のどを震わせず、それでも声門から息は出ているので、
ボリュームが小さく、一見やさしそうなイメージですが、
声帯への負担は大。
のどを震わせず、聞こえにくい分、余計に声帯に力をかけているのです。
通訳の仕事のなかでウィスパリング※ をするよう依頼されることがあります。
※シュショタージュ(Chuchotage=フランス語でささやくの意)ともいいます。
とくに、会議・ミーティングで発言の言語がわからない人が1人や2人など、
少人数のときに、この手法がよく使われますが、気を付けなくてはいけません。
だからといって、リクエストに対して、
「のどに悪いのでウィスパリングはお断りします」
とは言えませんから、
のどに負担がかからないように、ささやき声ではなく、小声で行うようにするということです。
小声、つまり、ちゃんと声を出しているけれども、ボリュームは小さく。
意識してみて下さいね。
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イギリス、アイルランドからヨーロッパ全域へ出張して通訳しています。
こちらのカテゴリーでは、通訳者の皆さんにとって役に立つ「声」、「のど」、「滑舌」 などについて書いています。
記事は、時代の変化に合わせて、随時加筆したり改訂したりしています。
Photo: https://aidanews.com/2014/06/19/whisper-voice-makes-the-muscle-hypertonia/