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053.ボランティアのお話③

こんにちは。イギリス在住会議通訳者の平松里英(rielondon)です。

今回も先々週、先週に引き続き、ボランティアについてのお話です。
ボランティアとプロとの違いについて、というお話です。
りえさんとはなさんのお仕事の経験を交えた、とても興味深いお話をぜひお聴きください!

この番組ではイギリスやアメリカの英語表現や現地での様子についてご紹介いたします。
また、英語の勉強に関するご質問やご相談を受け付けています。 Webサイトのお問い合わせページhttps://www.rie.london/contact)からどうぞ!

里英
こんにちは。会議通訳者の平松里英です。
はな
翻訳者のランサムはなです。
里英
先週に引き続きボランティアのお話なんですけど。通訳ボランティアのことで要は技術職・専門職なのにそれをボランティアという形で無料でさせてしまっていいのか?よくない、ということで日本ですごく話題になったという話をしたんですけど。私もそうだと思ってます、そこは。本当に。
はな
そうなんですね。
里英
私ロンドンのオリンピック・パラリンピックの時にボランティアをやったのは通訳のボランティアっていうことで募集されてないので。市民ボランティアってことなので。
はな
別に市民ボランティアであれば無償で。
里英
そうなんですよね。私なんかも通訳っていうお仕事でお金を貰っているわけですから、それをタダでここはしてくださいっていうのは何でって思うんですね。
そうするとおかしなことになってしまう。
はな
うん。というと?
里英
お金がないところ。お金がないってじゃあみんな言えばいいじゃないですか。
払えないんでっていうことなので。逆を言うと、どんなお金があるところでももっともらしい理由つけてるんですね。タダでやって、みたいなことに。
あれのそもそもの問題って…あとちょこっとお金貰えるんですよね確か。違いましたっけ?
はな
あ〜!そうでしたか。私まだその辺よく詳しく見てないんですけどね。
里英
まるっきりの持ち出しだったのか、ちょっとわからないんですけど。私のロンドンの時も、通訳のボランティアじゃないんですよ。通訳ボランティアっていうのがあったのかも知らないけど。私の知る範囲ではそういう名前のボランティアはなくて。市民ボランティアで。結局そこでものすごく高い給料の仕事の人であろうと、お医者さんであろうと関係ないわけですよ。フラットなんですよ。みんな同じ土俵でやってるっていうことだったので。地域に対する貢献。ロンドンとかイギリスとかっていうところに、お手伝いをする、貢献をするっていうところがみんなの題目というか。共通点としてあるわけで。そういうのがなくて単純に通訳料金払うと高いから、経験になるからボランティアでやって、っていうのと全然そもそもの位置づけっていうのが違いませんか?
はな
うん。大体ボランティアとプロの線引きの部分がね、どういう風になってるのかなって私は思ったんですよね。
里英
そうですよね。私実は、はなさん、バリバリの翻訳の人を目の前にしてあれなんですけど、東北の子供達とかその家族、地域の人たちのカウンセリングサポートをしている団体があって、日本の。そこの翻訳ボランティアでお手伝いしているんですね。
はな
なるほど。
里英
それは私は先ほどの、お金という形じゃないけれども、時間と労力で奉仕するっていうのかな?私日本に行ってやれないですから、それが。少しでも、っていうところなんですね。
あとは、話が前後して申し訳ないんですけど、彼らの活動に共感してるからなんですよ。何らかの形で関わりたいと思うからやっている、というのがあるわけですよ。じゃあ私は翻訳がこういう形でお手伝いすることができるし、ここはちょうどそういうのを必要としていたので、じゃあやりますよ、っていうような感じなので。
だったらば他のお仕事で、通訳・翻訳のお仕事でタダでやっているのとは違うと思うんですよね。
はな
う〜ん。なるほどね。ぶっちゃけプロとボランティアってどこが違うと思いますか?
里英
1番端的なところはお金を貰ってるか貰ってないか。
はな
うん。あと間違いをしないとこだと思うんですよね。
里英
そうですね。
はな
ボランティアはお金貰ってない分間違うことがあるけど許されている。
里英
うん。確かに。日本は特にそういう考え方がある気がしますね。私も実際今言った団体の翻訳をもう1人の翻訳者にチェックしてもらっているんですよ。出す前に。
その人が「ボランティアでやってるのにチェックまでするんだね」って。言われました。
はな
ボランティアはゆるいんですよね。なんでもね。
里英
そう。私はそういうつもりでやってないんですね。1つ誤ることがあるとしたら、納期が遅れる。締め切りを切られてないっていうのがあるんですけど。私がどうしても後回しになるので。
はな
そうですよね。
里英
これがね、お金をもらっている仕事で納期が結構きつかったら。はなさんなんかすごい時あるじゃないですか。
はな
すごい髪の毛逆立ってる時ありますけどね。
里英
すっごいじゃないですか。さっきも起きてたし今も起きてる。みたいな感じで。
はな
ありますあります。
里英
私も「え!まだはなさん起きてる」みたいな時とかある。あんな風にはやらないですよね、ボランティアだったら。
はな
そうそう。だからまあ、それでうまくいく時もあるけれども、ここ一番っていう時にどの程度頼りになるのかなっていうのは思いますね。
里英
なるほどね。やっぱりお金が介在する・しないって何なのっていうのはそこ。もっというとコミットメントっていうのかな?責任感?
はな
そうそう…
里英
という気がしますね。
そうそう、その通訳ボランティアのところで私が危ないなと思うのは病院に行くような、医療通訳、あれをボランティアでさせるでしょう?
お金がないのはわかるけど、あれは命に関わることだし。あとは裁判もそうですね。警察に行くとかも含めてですけど。法務法廷関係と医療関係は医療が命に関わるし、法務法廷は人生に関わるので。極端な話をすれば冤罪とか、いろんなことがあるわけじゃないですか。それを会議通訳とかそういう仕事で縦割りに考えていくと、すごく末端にあるように思われると思うんだけど。あれは間違いなんですよね。
はな
なるほどね。
里英
資料とか全然なくても「資料がないと通訳できないのはその人に能力がないから」とかって言っている業界の人もいるので、ちょっとどうかとは思いますけども、それは。
はな
え〜!そんなこと言う人いるんですか?
里英
法廷関係の人でいるんですよね。私もそれを読んだときはびっくりしましたけど。そんなことはないんですよ。というのは毎回案件が違うから。業界も違えば。
はな
そうですよ。
里英
でしょう。資料何もなくて、突然ただ訳せって言われても。
はな
そうですよ。ボキャブラリーとかも予習しておかないとね。
里英
そうですよね。あと人の名前ってすごく難しかったりしませんか?
はな
難しいと思いますね。
里英
内輪にとっては当たり前。1番誰にも何も確認しなくてもこの人の名前と肩書きは知っているという情報なんだけれども。通訳者はその日だけ雇われて行くので。肩書きがすごく長かったりとか、名前も。みなさん滑舌がすごくいいわけではないし、そこって必ず名前って正確に毎回聞き取れるとは限らないし。小野さんなのか大野さんなのかとかね。あるじゃないですか、そういうのとか。外国のカタカナの名前になれば余計に分かりづらいだろうし。その辺りは名簿をもらった方が絶対にいいですよ。だって頭の目盛りを使わなくて指で指せばいいんですから、そこで。指で指しながら読み上げればいいんだから、その方が脳は疲れないに決まってるんですけど。
はな
うん。そうですね。
里英
そうですよね。みたいなところは、なかなか理解していただけなかったんで。
はな
機械みたいに自動的にババババってできるって期待されているんですね。
里英
うん、あると思う。同業者でもそう言うことを言っている人がいるっていうことで。
裏を返せばそのぐらい通訳とか翻訳もそうだと思うんですけど一口に通訳とか言っても、要はモダリティっていうのかな。それが法廷なのか国際会議なのか何なのかとかで必要になってくるスキルとかknowledgeが違うという意味になるなと思うんですけどね。
だって病院なら病院で毎回毎回医療ばっかりやっているんだったら、っていうのと、今日は医療だし、明日は国際会議だし。ちょっと極端な例ですけど。次の日に別のビジネスの通訳に行くし、船に乗りますとか言ったらまた違うわけですから必要になってくることが。という気はしますけどね。あと相手かな。通訳で立ち上げる相手。ユーザーが違いますよね。一般聴衆なのか、専門家同士の時とかでは全然準備が違うので。その辺りを一緒くたにされるとね。「通訳は通訳で同じでしょ?」って言われると、誰に対してデリバリーをするのかによってレジスターって言いますけど、言葉遣いも違うし。
はな
そうですよ。それは翻訳もそうですけど。
里英
違いますよね。翻訳だってそうじゃないですか。オーディエンスに合わせて。何でしたっけ?はなさんが前すごく面白い例を出されてたじゃないですか。野菜とかフルーツだったと思う。
はな
そうでしたっけ?あんまり覚えてないけど。本当でもカタカナを使うかとか漢字を使うかとかね。日本語ってすごいいろんなバリエーションで言い方できるので。またそれによって印象全然違ってきますからね。
里英
違います違います。要は日本語で相当するものがないような用語で、キャベツとかピーマンとかそういうのじゃなかったですか?
はな
そんなの言ってましたっけ?
里英
私はなさんにそういうの出していただいて、確かにそれ言えてるなと思って。ちょっと似たような感じでいくと、マカロニウエスタンとスパゲティウエスタンみたいな感じですよ。
英語だとスパゲティウエスタンって言うんだけど日本語だとマカロニウエスタンって言って変えないといけないんじゃないか、みたいな感じで。でもマカロニウエスタンは日本語でもうすでにあったけれども、はなさんが関わった翻訳の時はマカロニウエスタンに当たる言葉がなくて、スパゲティの方があったようなパターンだったんですよ。その時に野菜の名前を変えて、要は日本でないみたいだから。
はな
そうですね。そういうことあったかもしれません。そうなんですよ。だから文化が変わっちゃうとね、そういうところまで変えないといけないっていうか。
里英
本当に。そここそね、機械翻訳でできないところだし。
はな
できないできない。
里英
ね。すごく意を噛み砕いて、汲んで。
はな
そうそう…
里英
ターゲットを探すっていう。
はな
そうそう。カタカナに置き換えるだけじゃ全然ピンとこないっていうこととかあるじゃないですか。
里英
うん。私はなさんのブログとか見ててもやっぱりそうだけど、思うのは、文学っていうか、文章お好きですよね。うん。すごくそういう感じがする。だから翻訳という形で前に拝見した時でも、文、言葉が好きで、だからこそ大切にしていらっしゃるなと。
はな
ちょっと偏執的なぐらいこだわっているところはありますね。
里英
そこまでこだわらなくていいのに、みたいな?悩んで?
はな
いっつも考えてますから「これ日本語で言ったらなんていうんだろう」「これ英語で言ったら」って。
里英
だからこそこの仕事が守られている。この仕事のガーディアンだと思いますけど。そういうスピリットが。
はな
しつこく、何度も何度も。だって翻訳って記録に残るじゃないですか。通訳だとその場で言って記憶には残ることもあるかもしれないけど、翻訳だと字として残るので。後々まで見れちゃう。
里英
通訳も対面だと1対1とかだと残らないけれども、残ることはものすごく増えましたよ。
はな
そうですか。
里英
またこれはね、別の問題なんだけれども、著作権とかが。
何度もそれが無許可で再利用されたりとかね。
はな
それは嫌ですね。
里英
ストリーミングっていうんですか?私がこちらで関わったオーディション系のテレビの仕事で日本からいらっしゃった方に対応したんですけども、その様子が日本で流れていたらしいんですね。後日気づいて。
で、私全然知らなくて、そのこと。日本の知り合いから何人かから連絡貰って。「この間出てたね」みたいな。
はな
知らなかった、みたいな?
里英
そう!知らなかったんですよ。
はな
里英さん本人が後でびっくり、みたいな。
里英
そう。ちょっとこれ契約書になかったんだけど…みたいな?これ以上話すとあれですけどね。そうなんですよ。無断で。だから全然普通に。
はな
いやいや…それもちょっと心配ですね。
里英
考え中なんですけど。そうなんですよ。
ダダ漏れっていうのかな?結構その辺りが。知らなければいいんじゃないの?みたいな部分が、特に日本はそうかなと思いますね。
はな
そうですか。へ〜
里英
大体media literacyが有って無い、みたいな感じじゃないですか。っていうか無いですよね。でもみんなおびただしい量のメディアに触れている。
はな
う〜ん。そうなんですかね。
里英
あまりそこの決まりごと、ルールってどうなの?とか、これはルール違反なの?とか、そうじゃない、ってことに対しての関心とか感覚がちょっと希薄だなっていうのは思いますね。批判になっちゃった。すいません。
今週はここまでにしますけど、また翻訳・通訳に関しては折に触れて。
はな
そうですね。
里英
ボランティアについても話をしていきたいと思います。
またそれでは来週。Bye!
はな
Bye!

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