こんにちは。イギリス在住会議通訳者の平松里英(rielondon)です。
事前資料|参加者名簿について
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ご用意いただきたいもの:バイリンガル名簿
たとえば日本語と英語など、両言語で名簿をご用意ください。
大規模な国際会議でも、社内のビジネス会議にも言えることなのですが、
話し合いに出席する方々の ① 正式な会社名、②所属先、③肩書き、④氏名(漢字と読み方)を明記した名簿、通訳者は日本側と外国側の両方を必要とします。
「名前なんて聴いていれば、いちばん簡単。誰にでもわかるでしょう!?」
と思われるかも知れませんが、決してそんなことはありません。
名前とは内輪の人間にとっては、あ・ま・り・に・も当たり前なもの ですが、
内輪の当たり前は一歩外へ出れば当たり前ではありません。
万が一、聞きそびれても、文章の前後からある程度判断できる語句(単語やフレーズ)とは違い、名前・名称はコンテクストから判断しづらい、独立したものですので、事前に伝達されていない場合は間違えるリスクが高めです。
とくに、
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日本国内でも変わった名前
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なじみがない異国の名前は、もともと分かりづらいものですし、
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会社名や肩書は特に、間違えれば失礼に当たります
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会社名+組織名+肩書は長くなります
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同じ業界の会社名やグループ企業でよく似た名称がある
といった具合に、けっこう落とし穴があります。
同時通訳は聴きながら同時に話している
ほとんど知られていない、または、認識されていないことなのですが、
同時通訳は聴きながら話すので、通訳者自身の声が邪魔になります。
自分の声が耳の外からと骨伝導で内側から自分の聴覚に届き、
発言者の発言と重なって障害となります。
そのため、
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名称のはじめを聞き逃しやすい
同時通訳は極度に集中力が必要な作業であり、短時間でもかなりストレスがかかります。
訳出する際には、どの語も同じ負荷がかかるわけではなく、訳しづらい語句や表現が出てきたときには余計に負荷がかかります。名前・名称は、上記のように、思ったよりも負荷がかかり、通訳キャパシティ(メモリ)を圧迫します。
そのため、あらかじめ負荷を軽減できるところは、できるだけ力を入れず、負荷を省き、大事な部分をこそ訳し漏らさないようにすることが重要です。大切なところは漏らさないように身構えつつ、力を抜けるところは力を抜いて、戦略的に能力(キャパシティ)を残しておきたい。
人の名前や、会社や組織の名称などは思ったよりもクセモノです。
そして、あらかじめ何とかしようと思ったら確実に準備できることでもあります。
また、国際会議などでは、人の名前や組織名、役職名が羅列されることも珍しくありません。
名称などは、名簿を傍らに置いておき、ササっと取り出して通訳キャパシティを(できるだけ)使わずに訳出し、それ以外の事前に用意できない部分に力を集中させるのが効率的です。
お持ち帰りポイント
通訳をご依頼いただく際には、是非、日本語と外国語の両方で名簿をご用意いただきますよう、ご協力をお願いします。