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翻訳者は通訳はしないのか?通訳者は翻訳はしないのか?

こんにちは。イギリス在住会議通訳者の平松里英(rielondon)です。

まだ自分が将来通訳者になることもわからなかった頃、私は22歳の時に結婚しました。今の夫とは再婚なので最初の夫との結婚式の話になります。

結婚式は日本でした。元夫はアイルランド人でアイルランドから両親がやってきました。結婚式の最中に通訳をつけなければなりません。

元夫の職場でベテランのインハウス翻訳者だった人を結婚式に招待していたのでその方にお願いしようと言うことになり訊いてみました。

ところが、断られてしまったんです!

ふだんから仲良くしてもらっていましたから、快く引き受けてくれるだろうと思っていたのに断られてしまい正直びっくりしました。

内容も日常会話で難しくはないし、新郎の父親が挨拶するのをひとこと訳してもらうだけなので、まさか断られるとは思いもしませんでした 💦

その理由は、

私は翻訳者であって、通訳のトレーニングを受けているわけではないからできない」と。

そう言われてもちろんすぐに諦めて引き下がったものの、「訳す」のは翻訳も通訳も同じじゃない?何故できないの?というのがその時の正直な感想で、理由が単に断る口実に聞こえたほどです。

「通訳の訓練を受けていない」と言われても、

頭の中が

??????

で覆われてしまい、ピンとこなかったのです。

よく理解できなかったことだけは、ハッキリと覚えています

やがて通訳の勉強するようになり、生業にしていくなかでクリアに分かるようになったのでした。

これは裏を返せば、依頼する側は一般的に理解していないということです。なぜ翻訳ができるのに通訳ができないのか、またはその逆、それを知らないし、理解していない。

分からない方がむしろ普通なのではないか?

と当時を振り返り思います。

しかし、

翻訳者も通訳者も同業者同士で話していると見えてくるのはこの逆で、なぜ故にお客さんがこの点を分かってくれないのか?分かりきったことなのに納得がいかない、理不尽ではないか!?と感じる人が多いことも事実です。

Contents

翻訳者として働いている人で通訳もやる人、通訳者として働いている人で翻訳もやる人

私の知り合いで主に翻訳を生業にしている人のなかで通訳もするという人は、いることはいます。いずれも日本をベースにしている人ではなく、イギリスに住んでいる人です。日本で翻訳をしている知り合いは、翻訳だけに絞っているタイプと、もう一つのタイプは通訳メインだけれども通訳の仕事が入っていないときに翻訳を請けている地方居住の通訳者です。

通訳も翻訳もやる人は、いずれもどちらかをメインにしている人が多い気がします。上記の後者も通訳メインですが、私も通訳メインです。これまで、翻訳メインにしていたことはありませんが、バランス的には今と比べると以前はもう少し半々に近かったと思います。半々というか、3割:7割くらいでしょうか。

今は、通訳が9割で翻訳が1割、あるいは通訳が10割という感じです。翻訳を請けるのは、まず緊急の案件でないこと。メディア業界の翻訳案件だと、同日の2時間後に納品してと言われるようなリードタイムが非常に短いものが珍しくありません。

このように緊急の翻訳案件は通訳の準備の合間にやれるようなものではないので、請ないようにしています。が、一般的に翻訳業界では、納期が近々の案件は増えることはあっても減る傾向にはないようです。機械翻訳の出現と技術の進歩。これが圧力の一つになっている気がしますが、それだけではなく、世の中がほぼ普遍的に敏捷性を訴求している。その影響の方が大きい気がします。

では、どんな案件を受けているか。私の場合は、通訳案件の前準備がない、あるいは融通が利く仕事量が緩めの週で、締め切りが同日や翌日の朝などではなく翻訳量が可用性のある日数で余裕を持って捌けるものだけを請け負っているので、かなり案件の数が限られます。

通訳しかやらない人、翻訳しかやらない人

通訳しかやらない人。一切翻訳をやらない人と、翻訳しかやらず一切通訳をやらない人。翻訳しかやらない人は理由として通訳の訓練を受けていないので通訳はやらないことが考えられます。それ以外に、通訳でも翻訳でも、まとまった金額を稼ごうとすると、どちらに絞った方が集中して対応できるので、自然とどちらかに絞られていくことも。

通訳は案件当日だけ仕事をして終わりではありません。事前に準備のための日を取っているので、一つの案件が終わったらすぐに次の案件の準備を始めたり、準備は複数の案件を掛け持ちで進めることがあります。なので、翻訳まで手が回らないことが(私の場合は)ほとんどなのですが、それでも通訳案件に関連して翻訳を頼まれた場合は、事前準備にも役立つので引き受けることがあります。

私の翻訳訓練は?そして翻訳訓練と通訳訓練との違い

私はスクールへ通っての翻訳の訓練は、映像翻訳でした。映像翻訳のなかでも字幕翻訳です。字幕翻訳では、そのほかの翻訳ジャンルとは異なり、字幕一枚あたりの文字数が限られたり、と特徴があります。

それ以外に、調べ物の仕方、品質保証のためのチェック、翻訳作業の上で気を付けるべき落とし穴など。表記が正しいか、何を使って検証するか、どんな辞書や事典、それらをどのように活用すべきか、スクールで教えてもらわなければ学ぶことがなかったであろう貴重な勉強となりました。

通訳の訓練にあって翻訳の訓練に含まれないもの。例えば、リテンションが挙げられます。翻訳の場合はリスニングやスピーキングよりも、リーディングやライティングのスキルの方が重視されます。翻訳では、インプットがリーディングでアウトプットがライティングなので当然です。

他方、通訳ではインプットがリスニングでアウトプットがスピーキングなので、インプットを正確に聞き分け、正確に理解し、記憶にとどめた後、アウトプットするために内容や論理的順序を整理し、聞き手が理解できる、つまり誤解されない、そして混乱しない、ことばでアウトプットすることが求められます。

通訳のアウトプットはスピーキングです。スピーキングではライティング同様、正しい文法が求められますが、表記の正確さは問われません。それに対し、翻訳のアウトプットでは、句読点の使い方を含め、語句や表記の選び方や文章全体を通して統一されているか。常用漢字になっているか、スタイルガイドに沿っているか、など。

通訳、翻訳それぞれに踏襲しておかなければならない、お約束があります。訳文、訳出を見たあるいは聞いたときに、お約束が当たり前に守れているか、踏襲しているかどうかで、プロの仕事か素人の仕業かが分かります。

通訳に行った現場で翻訳を頼まれたこと

はなさんはご自身の記事(こちら)のなかで「今度、通訳して」と頼まれたことがあり、また一度苦い経験をしているのでトラウマになっていて二度とやりたくないと思ったというエピソードを紹介されています。

少し角度が変わりますが、特定の理由で通訳しかせず翻訳をやらない場合があります。実際にあったことなのですが、あるとき刑事訴訟の裁判前の通訳で法律事務所に呼ばれました。法律事務所では担当の法廷弁護士(バリスター)が分厚いBundleを広げ、重要箇所を確認していきました。その途中でバリスターが言いました。

「ここのこの部分、クライアントのために翻訳してほしいのだけど」

口頭で翻訳すること(サイトトランスレーション)なら請けることができるが、文章にして出す翻訳なら通訳として依頼されて来ているので請られない」と説明すると、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして驚かれてしまいました。

「だって、通訳も翻訳もトランスレーションはトランスレーションでしょ?」

・・・(絶句)

同じ仕事と認識している人の多いこと、多いこと😱!!

通訳をするように雇われているのに翻訳をしたり、逆に翻訳をするために現場に呼ばれたのに通訳をしたり。それは契約内容と違えることになりますから、たとえ対応する能力を持ち合わせていたとしても派遣元の了解なしに請けるわけにはいきません

なので、その旨を伝えおことわりしました。このように、スキル的には可能な場合でもお断りするケースも考えらます。

受ける側(通訳者・翻訳者)も依頼する側(クライアント)も、事前に派遣元がエージェントならエージェントにその場で依頼してもいいものかどうか確認する直受けなら通訳者ないしは翻訳者と予め話をしてハッキリさせておくなど、正しく判断するために、この記事がお役に立てれば幸いです。

翻訳も併走でやることの利点

最後に、これから翻訳者になりたい通訳者になりたい人たちのために。通訳も翻訳も並走でやることの利点ですが、以前の記事でも書いていますが (関連記事 参照) 通訳は時間が勝負短距離)、それに対して翻訳は正確さが勝負長距離)とあるように走り方が違います。

けれども、だからこそ両方やることで補完作用が期待できます。

翻訳作業では時間をかけて練ることで、ことばに対する感覚(良い意味でのこだわり)も知識も鍛錬されます。文法文の構造も、何度も読み返しながらじっくりと分析するチャンスです。通訳しているときはじっくりとコンテンツを眺めるような余裕はなく、過ぎ去っていきます。

通訳の仕事をしているなら、翻訳の仕事を受けたときは通訳を現場でしている時とは全く違う筋肉を使うことを意識するといいと思います。

翻訳をしていて通訳にも挑戦する利点は、スピーキングのアウトプット力が上がること、そして瞬発力がつくことです。文章とは違いアウトプットが話し言葉なので漢語よりも大和言葉を重視することができ、というか重視するように心がけ、文章のように冗長・複雑な構造にはできないので簡潔にまとめる練習になるかと思います。

言い換えると、翻訳の筋肉と通訳の筋肉と異なる筋肉を別々に鍛える機会なので、違う筋肉を使うこと、あえて区別して鍛えるように心がけてアウトプットすることが重要かと思います。

記事を読んで「はて、この場合は?」など、質問が浮かんだり、相談したいことがある方は、気軽に下のコメント欄に書き込んでくださいね😘(メールでもOKです)

【関連記事】

シリーズ第一弾。通訳と翻訳の違い、よくある誤解について書いています。

「通訳という不思議な職業」の第二弾。通訳と翻訳の違いで意外なものとして、職業保険の保険料についても触れています。

第三弾。締め切りまでは時間がある翻訳と瞬間的にその場でアウトプットしなければならない通訳。働き方の好み適性で分かれる点についても書いています。

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