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在イギリス 日英通訳者の出張事情 海外編

ロンドン在住通訳者の平松里英(rielondon)です。

今回は出張事情の後編、前編のロンドン編に続き、海外編をお届けします。

月2~3回はイギリスから欧州各国へ

欧州で国際会議が開かれる場合、会場がドイツやフランス、イタリアであっても、会議自体は英語で進行することが多く、日英の通訳者が必要になります。欧州各国在住の日英通訳者もいるのですが数は多くはなく、私のようにイギリスにいる日英通訳者が、周辺のヨーロッパ諸国へ出張に出ることが多いのです。大陸欧州各国では英語⇔日本語ではなく、現地語⇔日本語の通訳者が多いことが主な理由だと思います。また移動費が、イギリスからでも大陸欧州の国からでもあまり差がないのも理由の一つだと思います。

案件の種類は、国際会議のこともあれば、企業のグローバル会議や全社イベント、監査や工場など現場での立ち仕事が多いときもあります。頻度は月や時季により差がありますが、東京では繁忙期は日に4件入るなどと聞きますが、そこまで忙しくなったことはありません。
一つ一つの仕事がいい加減にならないよう、日程が空いていても仕事を入れず準備の日を確保するようにしているので、海外出張は多くて月に2~3回、行き先は主に大陸欧州で、それ以外はイギリス国内。パリによく行く人、ドイツ方面によく行く人など、得意分野によっても、傾向が分かれるようです。

請け負う分野にもよるでしょうが、イギリスベースの通訳者の中には海外出張が続いて洗濯が追い付かず洋服が足りなくなるような人もいるようです。反対に、月に一度も海外出張がない人もいるので、かなり個人差があると言えます。

移動は飛行機がメイン。場所により陸路も

海外出張の移動の基本は飛行機。飛行中、ローマまでなら2時間半、それ以外の都市でも2時間前後が多いので、飛行機の中で資料を広げることはあまりしません(機内に置き忘れるのも怖いですし)。ただ、準備した用語集を見ることはよくします。自分で集めた背景資料(書籍など)を読むこともあります。ですが正直なところ、私の場合は少しでもエネルギーを温存したいのでノイズキャンセラーのヘッドフォンをかけて目を閉じ、眠ることが一番多いかもしれません。

また、空路だけではなく、フランスやベルギーへの移動なら鉄道が便利です。ユーロスターはもちろん、大陸についてからSNCF(フランス国鉄)などに乗り換えて移動することもできます。ユーロスターは、陸路とはいえ国際線。国内の移動とは違うのでセキュリティチェックがありますが、それでも空港に比べれば、家から駅までの移動時間や待ち時間も短くてすみます。ロンドンのセントパンクラス駅から、パリの北駅なら約2時間。感覚的には東京から名古屋や大阪まで行くのと変わりません。

ほかにもイギリスから出張の要請があるのは、近場はアイルランド、比較的遠方ならアイスランドやスカンジナビアなど。中東や「ヨーロッパの裏庭」、アフリカまで赴くこともあります。ロンドンからケニアのナイロビまでは8時間半。東京から豪州のケアンズが8時間弱ですから、感覚的には日本からオーストラリアに行くのとあまり変わりません。ただ、アフリカ大陸など、地域によっては事前に予防接種が必要な地域もあり、予防接種の種類も一概には言えないので、先の査証と同様、事前に確認する必要があります。

ビザ・乗り継ぎにはご用心!

海外出張で注意すべきことの一つがビザです。EU圏内は日本人にとってはビザの事前申請が(原則として)必要ない国ばかりのはずですが、それでも国によって事情が違うので、念のため入国要件は前もってチェックするようにしています。また、欧州内のトランジットは曲者で、仮にドイツで乗り継いで最終目的地はフランスだったとしても、経由地のドイツでも入国審査が必要となります。

以前、アメリカの担当者が航空券を手配した時、ドイツのフランクフルトを経由で目的地がフランスのリヨンだったのですが、アメリカの担当者は、EU域内はパスポートチェックがないと思っていたらしく、手配された便を確認するとトランジットの時間が40分しかなかったのです。担当者に急いで掛け合い、「私たちは日本のパスポートなのでパスポートチェックがあるのに、トランジットの時間が短すぎる」と言ったところ、EU域内=国内と同じ、と担当者は思っていたようです。

結局、航空券は変更できないので、事前にフランクフルトの空港側に掛け合ってもらい、到着後、一般の乗客は利用できない最短ルートで、特別に空港の職員が搭乗ゲートまで付き添ってくれました。全員が息を切らして特別ルートを走り抜け、なんとかギリギリ間に合いました。EU域内のトランジット、「侮るべからず」です。

英語だけでは不十分だと痛感することも

海外で通訳をしていると「通訳者として英語だけでは不十分」と感じることが多々あります。これは欧州ならではの事情だと思いますが、欧州では「通訳者は外国語をいくつも挑戦していてなんぼ」みたいな雰囲気があります。ほかから見れば「そんなにいくつもできるなんて、どれも中途半端なのでは?」と思われそうですが、欧州ではそうではありません。このあたりは、第1回の記事「日本と違う?!イギリスの通訳事情」でも触れたとおりです。

もちろん、完全バイリンガルに対する判断基準は厳しく、通訳者としてダブルA(例えば英語も日本語もA言語として判定してもらう)のは、ものすごく厳しい。両言語母国語というだけでは認められません。「それではまだまだセミリンガル」というレベルの人が沢山いるということですね。
その反面、外国語としては英語しか話せないと、「ちぇ、英語しか話せないのか」と思っているのが相手の表情にありありと出ます(泣)。どこへ行っても現地の言葉を学んだほうがいいという気持ちにさせられるのです。

ちなみに私はイタリアにほぼ毎月行っていますが、ここのところ行くたびに「イタリア語は覚えたか」と現地の人たちに突っ込まれるので、少しでもイタリア語を勉強したほうがいいだろうか…と目下悩み中(汗)。通訳ができるレベルではなくとも、現地の言葉で渡り合おうと努力することは、仕事の全体的な成功度にも違いが出るような気がします。
それだけではなく、仕事が終わってタクシーで空港まで帰るなんていうときにも、現地語ができたほうがいいことを実感します。タクシーの運転手さんはどこの国に行っても、英語が通じる人もいるけれど、通じないことも多い。私のイタリア経験では2勝1敗くらいの割合で英語がアウトなので、そんな時は限られたフランス語でやっとどうにかなったということがありました。

費用建て替えは大変でも、出張は通訳者の醍醐味!

海外出張で大変なことの一つは費用です。直受けのお客様は別ですが、エージェント経由の仕事の場合、航空券も宿泊費も、まずは通訳者が立て替えることが多くなります。問題は、立替から支払い清算までの期間が長いこと。私の経験では、日本のエージェントは月末締めの翌月◯日や翌々月払いが珍しくなく、航空券も宿泊も事前に手配することを考慮すると、回収までに軽く2~3カ月かかることも珍しくありません。

こういうことが、1ヵ月に数件あると考えると、懐事情が辛くなってくるわけです。まとまった軍資金を常日頃持ち合わせていないと回らない。潤沢に余剰資金が準備しておけるならいいのですが、所詮個人ですので、大企業のようなわけにはいきません。現地のエージェントの場合は請求書の提出を「月末締め」など特定していないことは珍しくなく、請求書を受けた日(あるいは記載された発行日)から30日以内などが多いと思います。

現地のエージェントの場合は、交渉次第の部分がありますが、食事代などを「立替清算」ではなく日当(PerDiem)として定額にしてくれることがあります。レシートの提出など煩雑な手間が少しでも省けるので私はこのやり方が好きです。会社によっては、陸上移動など諸々の経費も、全部コミコミで見積もりを出してくれと言ってくるところもあります。これはこれで、一長一短ありますけれど。

このように大変なこともありますが、欧州で通訳をしているおかげで、いろいろなところに行けるようになったのは何よりうれしいことです。お客様をはじめ取引先との付き合いはもちろん、現地で出会う人々や味覚、景色など。この仕事がなかったら出会うことがなかったすばらしい体験の数々。仕事中は悲喜交々でも、これが励みとなり続けていられるという面もあります。

大きなプレッシャーを感じて冷や汗タラタラ、終わればヘトヘト、脳はオーバーヒート。ふと気付けば、鏡に映る自分の顏は3歳老けて、頭はボサボサ。けれども3日やったらやめられない。出張途中に垣間見る景色など、何ものにも替えがたい。場所が変われば、国が変われば、嫌でも気分転換になる。通訳という仕事には付き物の出張が、実はこの仕事のご利益なのではないか、とすら思っています。

 

(この記事は通翻WEBに「第4回 在イギリス 日英通訳者の出張事情 海外編」として掲載されたものです。)

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