こんにちは。イギリス在住会議通訳者の平松里英(rielondon)です。
堀江貴文氏とカルロス・ゴーン氏のインタビュー|通訳の視点からホリエモンの英語について語るVol.1
先日、ホリエモンこと堀江貴文さんが、レバノンでカルロス・ゴーンさんと対談した様子をご自身のYouTubeチャンネルで公開し、話題になっています。
そこで、ホリエモンの英語がうまいかどうか知りたい人の為に、ホリエモンの英語がいけているのかどうか検証してみたいと思います。全体で35分という、わりと長尺の動画なので、一回ではお伝えし切れません。
今回はシリーズ第1段、はじめなので「ホリエモンの英語についての印象」をお話ししようと思います。
これから暫くのあいだシリーズでお届けしていきますので、どうぞお付き合いください。
▶︎動画はこちら(インタビューの開始箇所に頭出ししてあります)
次回(第2弾)は、解説で登場する用語「レジスター」と「英語には敬語があるのか」についてお話しします。第3弾からは、ホリエモンの英語を書き起こして、詳しく解説していきます。
ぜひ真似してほしいお手本になるところ、真似はお勧めしないけれど参考になるところ。後者はどこをどうすれば改善できるのか、その方法を「基礎レベルの英語でブラッシュアップ」を note.mu でご紹介しています。音声記事もあります。
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note.mu テキスト記事 英文の確認にどうぞ。
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note.mu 音声記事 発音や音の確認、音声による解説をどうぞ。
Contents
はじめに:ホリエモンの英語についての印象
堀江氏の英語力、英語レベルについて、私なりの所見を述べておきたいと思います。
英語力(言語コミュニケーション)について、今回は純粋に堀江氏の冒頭の5分間の英語について、とくにわたしの関心を引いた部分をお話ししていきます。
文法的な間違いは全体をとおして遍在しており(失礼!)それだけで記事が長編になってしまいますので、「重箱の隅をつつくような」細かいレベルの指摘はしませんので予めご承知下さい。
また、非言語の部分(マナー、ジェスチャー)についても同様の理由により、またの機会にシリーズのなかで解説していきたいと思います。
さて・・・「受動的語学力」「受動的英語力」または「受動的語彙」、そして「能動的語学力」「能動的英語力」または「能動的語彙」ということばを聞いたことがありますか?
堀江氏は普段から「グローバル化の波はどんどん拡大していく」とか「もう英語を避けて通る道はない」と発言をされており、国内外でビジネスを展開しています。
『英語の多動力』という本を出されているように(すみません未読了です)英語の必要性を説いているし、また東大出身でもあるので「少なからず英語ができる人」というイメージがあるのではないでしょうか?
今回のゴーン氏とのインタビューの様子を視聴し彼の発する英語を聞いて「すごい!」と思った人もいれば、「え?文法とか、他にも基本的な間違いが多くないか?」と、不思議に思われた人もいらっしゃるかも知れません。
堀江氏は、東大まで進学した、つまり受験勉強などで英語をしっかりやっていたはずで、今でも意識高く、知的レベルの高い、知識量の多い人、とわたしも認識しています。なので、ポテンシャルは高そう。まず英語力は低くはなさそう、です。
では、なぜ先日のインタビューのような英語になったのか、その背景となっている一番大きな理由を考えてみたところ、わたしが考えるに、受動言語と能動言語 その二つのレベルの乖離 おそらくこれに尽きる、と思いました。
受動言語とは読んだり聞いたりという受動的な語学力(英語力)。能動言語とは書いたり話たりという能動的な語学力(英語力)のことです。今回の場合は書くほうではなく特にスピーキングですね。
受動的な力はインプット、能動的な力はアウトプットとも言い換えられますが、アウトプットがインプットするレベルを超えることは、まずありません。これはホリエモンだけではなく、誰にでも言えます。「英語は読んだらある程度理解できるけれど、話そうとするとその半分どころか、ろくに話せない。」ーこれです。
通訳者にとってもこれは同じです。通訳の訓練でも「能動的な語学力を受動的な語学力のレベルに近づける」ことを目標にします。他言語の通訳者、EUや国連で多くの言語を操りバリバリ通訳をしている通訳者たちですら同じことを言っています。
読んだり聞いたりして理解できても、同じ表現が自分のことばとして口から出てくるとは限らない、いや、まず出てきやしない。そういうものです。
ですから公平に見て「堀江氏のその点を決して貶してはいけない」と思います。
上記を踏まえた上で、彼の英語についてさらに続けます。
彼の受動的英語力(インプットした英語を知っていたり理解する力)は、今回のインタビューのスピーキングレベルより高いであろうこと。これはおそらく間違いないと思います。
時折、彼の知性を覗かせる語彙(用語)が飛び出したりして、話し合おうとしている内容のレベルの高さが表れていました。(仮に直前で詰め込んだ語彙だったとしても、です)
それだけに、英語のアウトプット・レベルが及ばなかったことが惜しまれますが、もう少し整った英語になっていれば「彼らしいキレ」というか「毒(?)」のある対談になっていただろう、と思いましたし、
お相手(ゴーン氏)と非言語のコミュニケーションでもバランスを取りながら会話を進めることができていたなら、いつものホリエモンらしいエッジが発揮できたはず・・・とも思いました。これに関しては、まるで自分のことのような悔しさすら覚えました。
わたしのように通訳業界の片隅で口に糊をしていても、会心の出来なんてことはなかなかありません。正直に気持ちを吐露するなら、いつも何かしら「あそこはもっとこう表現すればよかった」と思うものです。
【出典】https://aiic.net/page/4004/
※Active Language の項を読まれたし(英語によるサイト)
少しだけ文法的な間違いについて・・・
文法的なところで二点だけ述べさせていただくとすれば、主語が一人称単数のときに三単現の「s」を付けてしまうことが何度もありました。また、過去形や完了形がほとんど(というか、まったく)使われておらず、いったい過去のことなのか、現在のこと(普遍的なこと)なのか判別できず、聞き手にとっては話について行きづらかった、というのはあるかも知れません。
もっとも、ゴーン氏は日本が長かったのでこの手の不完全な英語には慣れていたかも知れませんし、彼にとって分かり易かったのか、分かりづらかったのか、本当のところはわかりませんが、お二人でゴーン氏のことを話しているわけなので、文脈から大概の抜けは埋められたでしょう。
ですが、ゴーン氏以外の、日本語を介さない人たちが視聴してどう感じたか、これはまた別の話です。時制の判然としない文の羅列で話の流れや物事の流れについて、正確に追いついて行けない人、つまり混乱してしまう人がいたとしてもまったく不思議ではない。そこは否めなかったかな、と思いました。
いかがでしたか。この回の最後までお読みいただきありがとうございました。シリーズの第1弾ですので始まったばかりです。まだまだ続きますが、第2弾以降もどうぞお付き合いください。
基礎英語でサクッと敬語|note.mu
第3弾から具体的に表現について掘り下げて解説していきますが、私ならこう言っただろうという部分で紹介している英語よりも1)短く、2)基礎レベルの英語で、3)失礼のない言い方ができるか考えてみました。
こちらは note.mu に「基礎レベル英語でブラッシュアップ」という見出しで掲載していきます。テキストと音声を note.mu に掲載していきます(ただいま準備中なので数日お待ちくださいね)ので、繰り返し音読したり、オーバーラッピングなどで英語の敬語表現の定着に役立ててください。
ではまた、Vol.2でまたお目にかかりましょう!