こんにちは。イギリス在住会議通訳者 の平松里英( rielondon )です。
先週に引き続き、はなさんがIT系新聞のプレスリリースの翻訳を 行っていた時のお話しです。
例えば映画のタイトルをどのように翻訳するか、など様々な分野の 翻訳を行う難しさや、楽しいエピソードなどが盛りだくさんです。
次に日本語になった英語のお話しです。
最近でもたくさんの英語が新たに日本語としてカタカナで使われる ようになってきています。
通訳や翻訳では、相手の方のニーズによってどのような言葉を選ぶ かがとても大切なのだそうです。
言葉は日々変化していくもので、英語だけでなく実は日本語の変化 にも常に目を向けていることが大切、 という為になるお話しをぜひお聴きください!
この番組ではイギリスやアメリカの英語表現や現地での様子についてご紹介いたします。
また、英語の勉強に関するご質問やご相談を受け付けています。
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こんにちは。ロンドン在住会議通訳者の平松里英です。
先週に引き続き、はなさんのおもしろいお話。すごい!365日を2年間、700日以上、来る日も来る日もプレスリリースを訳したというお話を伺っています。お願いします。
プレスリリースって一口に言ってもいろんなパターンがあるんですよ。投資家向けの情報であったりとか新製品の情報であったりとか、映画の新作の情報であったりとか。あと、調査結果ってあるんですよね。どこどこの団体がこういう調査を行ったらこういう結果が出た。
IT系ですよ。IT系だけど「どこどこの団体が調査を行った結果によると何年後には住宅の何%のところでインターネットが普及してるでありましょう」みたいな「モバイル化されているでしょう」とか「リモートワーカーがどれぐらい増えてるでしょう」とか、そういうのでIT系ですよ。
映画は調査じゃないですね。「今度の新作でトム・クルーズが出てます」とかね。
うんうん。「ここで使われているソフトウェアはなんとかだ」とか。
なるほどね。なんとなくそうなんだろうな、っていうか思いながらですけど。私たちの同業者ならともかく、そうでない部外者が聞くと「なんで?」って思うかな〜って思うんですよね。それでいくとプレスリリースの中で、切り口としてはITだけれども、結局読者はIT分野に勤めている人なんだけれども、ありとあらゆる話題を提供していたってことですね。それに対応していくのって、翻訳者は一人なわけで。ネタは色々だけど。
そうそう。一通りあるとパターンわかってくるんですけど。「今回は投資家情報だな」とか「今回は調査結果だな」とか。そのパターンがわかるまでは結構なんじゃこりゃ?みたいな感じでひたすら読んでやってましたね。
そうですよ。その当時まだ私始めたばかりの頃ってずいぶん前ですからね。今ほどインターネットもそんなに発達してない時期だったので、国際電話かけて訊いたりとか。「日本ではこういうのなんて言うんですか?」みたいな。昔はそんな守秘義務も厳しくないから教えてくれる人もいるんですよね。あと知り合いに訊きまくる。日本語はわかんないけど、コンセプトだったら説明できるアメリカ人とかいるから。その人に訊いたりとかね。
あ、そこ。そのコンセプトは説明できるアメリカ人がいる、とかっていうお話なんですけど。結局それ説明してもらった後で、はなさんが自分の中で咀嚼して、今度は日本語で出すわけですよね?
そう。一応業界用語みたいなのも使えてないとダメだし。
そうです、そんな感じです。まさにそんな感じです。数をこなすってすごい大事なので。
ここでね、やっぱり1本1本入魂というか、右から左へ飛ばして行ったわけではないんですよね、全く。1つを産み苦しみを味わいながら出して行った。それもジャンルも色々で、っていうところですよね。例えばITならITで、例えばよくあるところではマニュアルとか。マニュアルならマニュアルを2年間ずっと書いてたわけではないっていう。
そうです。その朝になって来るまで何が来るかわからない。
なるほどね〜。要はお客様が今日は蕎麦が食べたい。蕎麦屋さんが出す蕎麦として納得のできる蕎麦を出さなければいけないかと思えば、次はビーフシチューを出さなきゃいけないとか。
そうですそうです。だからやってく中で簡単にできるものもあれば苦労するものもあるわけですよね、それなりにね。
うんうん…いや、そうでしょうね。1番苦労したものというか「これは忘れられない」みたいなのありますか?
1番苦労したっていうか、これは忘れられないっていうのは失敗した時ですね。間違えた時。1番印象に残ってるのは、もう随分前の話ですけどトム・クルーズ主演の”Mission: Impossible”っていう映画のプレリリースを翻訳した時に、まだ「ミッション:インポッシブル」っていう題名が日本での公開の題名が決まってない時期に”Mission: Impossible”っていうのをトム・クルーズが出るっていう記事があって。”Mission: Impossible”って調べたんですよ。調べたら日本では旧作が「スパイ大作戦」っていう…
公開されていることがわかったので、トム・クルーズ主演のやつも「スパイ大作戦」ってタイトルになるだろうと思って「スパイ大作戦」って書いて出したんですよ。
そしたらね、それでなんか得意になってたらあとから「ミッション:インポッシブル」っていう小さいツの入ったさ、日本語としては私的にはありえない感覚のタイトルで公開されて。いや〜と思いました。
入ってましたっけ?大体ミッションって言葉自体が日本語ではそんなにね、ミッションスクールとかね。そういうところでせいぜい使われるぐらいで、そんな使命っていう意味で使われてるってあんまり一般的ではないところにいきなり「ミッション:インポッシブル」「インポッシブル」が結構衝撃的でしたね。カタカナで書くのか、みたいな。
あれは随分議論して決めてるんでしょうから、間違いなく。それをその出てない段階で知れというのは無理ですよこれは。オラクルじゃなかったら。オラクルって会社のオラクルじゃなくて、預言者って。未来を予知するというね。
だからもう出ちゃってるから、こっちはね。手の打ちようがないんだけれども。
いや、来たっていう話は聞いてないので。きっとまだ前だからってことで大目に見て貰えたのかもしれないですけれども。
間違えるっていったって、やっぱりこれは間違いになるのかな?読んだ人にとってはそうですよね?読者が読む頃には「ミッション:インポッシブル」っていうタイトルは世に出てたわけですか?
出てないと思います、わかんないけど。だってアメリカでその日に出たプレスリリースが日本にその日のうちに公開されるから。
いや本当ですよ。通訳もそれはある意味同じで、話の途中で突然それが出てくると困る時ありますね。私割と映画が好きなので、結構捻り出せるというか思い出せることが多いですけども。結局日本語のタイトルと英語のタイトルがかけ離れてることが少なくないですよね。
たまたまそれ両方とも知ってたりとかね、すればいいですけど。例えば”Out of Africa”なんて「愛と哀しみの果て」でしたっけあれ。
どちらかしか知らなかったら話が通じないと思うんです。
そうですよだってその愛と青春系のやつって全然原題と違ってること多いですよね。
うん、そうですね。全然なんでちょっと知っておかないとっていうのはありますよね。まあまだそういう意味では翻訳は最悪調べればいいというか、調べなきゃいけないっていうのはありますけど。
それをそのまま出したんではお仕事にならないですもんね。
でも日本語になった英語っていうことで、他になんか英語のタイトルとか以外にあります?心に残っているものとか。
日本語になった英語ですか?いやなんかね、日本語になった英語っていっぱいあるし、昔はそうじゃなかったのに気がつくと定着してる言葉ってあるじゃないですか。
ちょっと例を挙げてみるとエンゲージメントとかね。イニシアティブとかね。
分野によってはカタカナのままでよくて、というかカタカナでないといけなくて。
そうそう…でも分野変わると、そんなのカタカナばっかり書かれて困る。
和語にしないといけないというか、そういうのありますよね。
そうそう…だから感覚的なもの、概念的には同じことを言ってるのにカタカナで書いて欲しいお客さんと、日本語っぽくして欲しいお客さんと色々いるんですよね。
極端な例ですけど、カメラのことカメラって言わない人いないと思うんですけどね今。
昔のものを指して言うんであれば、「〜写真機」とか。そうなると思うんですけど。でも英語だと”~ Camera”って言いますよねおそらくね。
その辺りとかありますよね。だから時代に合わせなければいけなかったり世代だったり。分野、文脈っていうことですよね。
本当そうですよ。昔はさ、「ゲットする」なんて絶対言わなかったけど、最近は「ゲットする」とかって言う人いるじゃないですか。
いますいます。あれはポケモンからだったんじゃないですかね。
「ゲットだぜ」ってありましたよね。そこからかな〜とか。
自分の感覚の中で日本語ではこうは言わないって思ってると、いきなり突然変異を起こして日本で受け入れられたりするようになったりするケースが多いので。だから自分の物差しをいつも日本の市場に合わせて微調整かけないといけないって感じですよね。
本当ですね。日本語ウォッチって言ったらいいのかな。大事だと思いますね。
変わっていくし。言葉ってそもそもそういうものなんだろうと思いますけども。
うん。本当ですよね。私はどんなのがあったかな。Initiativeがそのままイニシアティブって訳されていたりとか。
うん、それはありますね。最近のビックリはね「オポチュニティー」
オポチュニティーかよ、って私は思ったんだけど。
そう!それビックリしましたね。だけど化粧品系とかね、お客さんによってはね、それが言葉になっちゃってるのがあるんですよ。だからね、ビックリしましたね。
あ〜、そういうのはコピーライティングっていうことですね。
コピーって宣伝文句だから、よくよく考えると「変だよね、これ」とか「意味わかんない」ってのは多いですけどね。雰囲気ですもんね。
うん。なんだったかな。「ほっこりとした宿」とか。「なにそれ?」って感じですよね。
でもなんとなくわかる、みたいな。でもわからないっていう。
うん、そう。あるんですよ。だから日本語って漢字で読んだ時とカタカナで読む時とひらがなだけで読む時と印象全然変わるじゃないですか。
それって英語にはない良さなんですよね。英語は全部同じ文字だから。
だから日本語ってすごくビジュアルを大事にする言語ですよね。
確かに話し言葉と書き言葉にすごく隔たりがある言語かなとは思いますね。すごくと言っていいのかわかりませんけど。漢字というのはもちろん読むことを前提にしている表現なわけで。
漢字見ると大体雰囲気わかるみたいなことあるじゃないですか。
それが同じ意味の言葉だけどカタカナでビ〜って書かれるとちょっと読むのが大変みたいな。
そうですね。意味も分かりづらいですしね。腑に落ちないというか、ストンと来ないですよね。
そうそう…カタカナのセンスっていうか、その方がオシャレっぽいって言って喜ぶお客さんもいるしね。
セレブななんとか。この「セレブななんとか」って突き詰めると「どういう意味?」って思ってしまうんですね。
Celebrityっていったら、誰が聞いてもその名前を聞いたら「あの人ね」ってわかる人のことなんですよね。
そうですね、人。「セレブなホテル」とかこれはCelebrityが泊まっているホテル?でも泊まっていないかもしれないけどそんなような雰囲気があるところは、豪華な感じがすると「セレブなホテル」って言うの?みたいな。だったら「豪華なホテル」でいいのでは?とか思ってしまうんですね。
なんか日本で「セレブ」って名前の付いたティッシュかなんか売ってたような気がする。
うん。なんだっけ?「鼻セレブ」だっけ、なんか忘れちゃったんですけど。「こういう風に言っちゃうのか」って私思って見てましたね。
でも語感が「プレミアム」だと、固いというか、あんまり良くないので「セレブ」って?ちょっとよくわからない。そういう風に悩むんです。
理解できないから。理解できないと通訳する時とかってすごくし辛いんですよ。そういうわけのわからないものって訳せないから。
というお話で。この話尽きないですよね私たちし始めたら。
また来週以降のお話で少しずつ散りばめていくことにはなるとは思うんですけれども。今週はこれでお時間が来ましたので。とりあえずここで締めとさせていただきます。どうもありがとうございました。Bye!
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