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在イギリス 日英通訳者の出張事情 ロンドン編

こんにちは。イギリス在住会議通訳者の平松里英(rielondon)です。

Apollo Hammersmith BGT2018

今回は、通訳の仕事に付き物の出張についてお話ししたいと思います。出張には国内と海外があり、また、国内でも宿泊を伴うこともあれば日帰りのこともあります。そして、海外出張にも、たった1日のために赴くこともあれば、一週間を超えるものや、複数の国にまたがることも珍しくありません。

そこで、出張については前編と後編に分け、国内編・海外編でご紹介します。今回は前編の国内編ということで、ロンドン市内とそれ以外へ移動する通訳の仕事や交通事情について、個人の経験からではありますが、ご紹介したいと思います。

Contents

ロンドンならではの通訳現場

遠方への出張もありますが、通訳者としてはロンドン市内のあちこちを巡ります。通訳の仕事をしていて魅力だと感じることの一つに、普段は決して入ることのできない建物の中に入れることがあります(イギリスに限ったことではありませんが…)。

ロンドンではどのような建物に入る機会があるかというと、例えば、普段はテレビのニュースでしか見ない首相官邸であるとか、財務省など各種官庁の入っている建物で、それらはどれもとても古く歴史のある荘厳な建物で、まるで博物館のようです。

ロンドンの市庁舎は現代的なロンドンを味わうことができ、由緒ある迎賓館やホテル、他にも教科書に出てくる有名な部署のあった部屋など、安全警備の厳しい場所・建物に出入りすることもあります。通訳の仕事をしていなければ、入る機会はまずない場所ばかりですので、貴重な経験となっています。

ロンドンの交通事情

通訳者は現場に決して遅れるわけにはいきませんが、問題となるのはロンドンの交通事情です。日本なら大問題になるであろうキャンセルや遅延ですが、ロンドンでは遅延はしょっちゅうで、キャンセルも日常茶飯事です。混雑が原因のこともありますが、実際は「運転手が来ない」とか「その日は運転手が足りない」とか、理由もそんなレベルで、失笑を買いそうですね。

突然バスから降ろされたり、地下鉄が止まったりすることがあるロンドンでは、住民の乗客は慣れていると見えて、降ろされてもすぐに代替ルートに向かって歩き出します。運行中、列車に不具合が起きたりして電車から降ろされたら、乗客は皆「またか…」とため息をつきながら「just get on with it」とばかりに、ちゃっちゃっと動く人がほとんどです。この切り替えの速さには感心させられます。駅員に文句を言っている人は、ほとんど見たことがありません。

日本のように遅延証明を出してもらうのにも、いちいち時間がかかりますし、手続きも面倒です。しょっちゅう遅延するので、申請をしていたらいくつあっても足りないし、証明書が手元に届くまでも、たらい回しに遭います。

こんな交通事情ですから、通訳の仕事のある日は出発時間や出張の移動日にはとても気を遣い、代替のルートまで入念にチェックします。また、ただでさえ頼りにならない地下鉄ですが、週末はさらに当てにならず、本数は平日より減り、路線工事もあります。空港へ向かおうにも到着時間が読めないので、余計に時間を見ておかなければなりません。ですから、移動日は、週末は避け、できるだけ平日にするようにしています。

どうしても週末に移動しなければならない場合は、地下鉄であれ、鉄道(Overground)であれ、平日よりかなり早い時間に家を出ることにしています。代わりのルートを頭に入れ、途中でルートを変えなくてはならなくなっても間に合う時間に出て、かかる線の運行状況も前もって調べ、常に状況が変わるので、さらに出かける直前にも運行状況をチェックします。

また、ヒースロー空港に行く必要がある時は、あえて遠回り、迂回ルートを通ります。私の場合、ヒースロー空港までは、自宅からパディントン駅に行き、パディントン駅からヒースローエクスプレス(空港行きの快速電車)に乗るのが、一番シンプルなルートです。

自宅の最寄り駅からパディントン駅まではCircle Line(地下鉄)で一本ですが、リスクが高いのでこのルートはまず使いません。パディントンまでは、地下鉄でも複数の路線が乗り入れているのですが、その中でも東京の山手線のように巡回しているCircle Lineは当てになりません。遠回りになっても、最寄り駅から逆方向に幾つか駅を「戻る」ようにしてBakerloo Line(地下鉄)に乗り換えてパディントン駅に行くことが多いです。
※ロンドンの地下鉄路線図はこちら https://tfl.gov.uk/maps/track/tube

国内出張 日帰りの出張

ロンドンから日帰りの出張に行くとき、どのあたりまでカバーできるか。あくまで私個人の経験ですが、ロンドンから高速鉄道で1時間30分ほどのバーミンガムなら「当たり前」、それよりすこし遠くとも、リヴァプールやマンチェスターまでなら日帰りで対応することが多いです。ただ、単純に距離だけでは判断できないこともあります。

例えば以前、ウェールズに接するシュロップシャーに日帰り出張がありました。距離的にはバーミンガムと大差ないのですが、場所により交通機関でのアクセスが難しいのです。ミーティング時間が短かったのと、駅まで送迎をしてもらえたので日帰りで対応できましたが、それがなかったら日帰りでは難しかったでしょう。また「ウェールズに接する」と書いたのには訳があります。ウェールズは景色がきれいで素敵なところが多く大好きなのですが、交通アクセスとインターネットや電話(!)も含め通信には注意が必要なのです。

谷や山が多く、それだけに本当に景色が見事でハイキングやトレッキングの聖地といった感じ。けれども、その地形が邪魔するのか、携帯電話がつながらない(涙)。通訳の仕事でウェールズやその近辺に出向くときは、携帯端末に頼らずとも済むよう、バックアッププランを練っておきます。「何かあったら電話すればいい」とか「迷ったらケータイのマップを見ればいい」が通じないので、原始的な方法で備えておくことにしています。

ロンドンの空港とお勧めの新サービス

次に空港ですが、ロンドンだけを見ても、ヒースロー、ガトウィック、シティ、さらに少し遠くはなりますが、スタンステッドやルートンと沢山あります。私は個人的には、ロンドンシティ空港が一番便利でお気に入りなのですが、いかんせん、規模が小さいので就航会社も就航地も、多いとは言えません。このため、どうしてもヒースローとガトウィックの利用が多くなります。

また空港ではRegistered Traveller(英国登録旅行者)カードが私の必需品です。イギリスには、Registered Traveller Service(登録旅行者制度)と呼ばれるサービスがあります。これはUK入国時に、英国入国審査を簡易化できるシステムで、UKパスポート保持者と同じレーンを使う権利がもらえるので、UK/EU Passportsレーンでも、ePassportレーンでも利用できます。つまり旅行者を含め入国者でごった返し、長時間待つことになるAll Passportsレーンを避けることができるのです。

個人的には、Landing Cardの記入が不要である点が気に入っています。記入に大した時間はかかりませんが、機内で用紙をもらい損ねたり、列に並んで待っている時にペンや航空券の半券がすぐに出せなかったりするので、Registered Travellerカードでこうした手間が省けるのは便利です。例えるなら、ケータイの指紋認証の使用でパスコードの入力から解放されるのと同じです。

空いているなら従来通りAll Passportsレーンでももちろん構いませんし、これがあると着陸してから街中に出るまでの時間がぐっと短縮できます。出張で一緒になった通訳者数名に訊いてみたところ、その人たちは皆このサービスを使っており、手間が一つ減るので助かっていると言っていました。

一つ難点があるとすると、パスポートや顔認識がうまくいかないことがあり、その場合は結局入国管理官のところへ行って審理されること。それでも、申請費用は高くはありませんし、イギリス入国時にセーブできる時間を考えると、私は補って余りある出費だと思います。

他にもいろいろとご紹介したいことがありますが、今回はこのへんで。
次回は出張の後編、海外編をお送りします。お楽しみに!

 

(この記事は通翻WEBに「第3回 在イギリス 日英通訳者の出張事情 ロンドン編」として掲載されたものです。)

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